こけし研究家・高橋五郎の画像

高橋五郎プロフィール(1)

 音楽家・こけし研究家  仙台市在住

 音楽家としてチルコロ・マンドリニスティコ・フローラを主宰。
演奏活動から、後進の指導と多忙の日々を送る中、東北地方の郷土玩具の蒐集と研究にも長年
力をそそがれてこられました。
御自身の貴重なコレクションの公開、数多くのこけし研究書の刊行、こけしコンクールの審査、
等々、数多くの活動を通してこけしの啓蒙、発展に尽くされています。

■このプロフィールは、
 カメイ美術館 こけし特別展「歴史的発見!高橋五郎氏のこけし研究より」に掲載中

高橋五郎プロフィール(2)

 マンドリニストという音楽家である高橋五郎氏は、同時に、こけし研究家であり、さらに東北屈指の郷土玩具蒐集家でもあります。演奏会への出演や後進の指導など多忙な日々を送るかたわら、長年にわたって東北地方の郷土玩具の蒐集と研究に力を注いで来られました。

 高橋氏は、仙台市の閑静な住宅地に、蒐集した郷土玩具を陳列している「仙臺こけし洞」をかまえ、貴重なコレクションを公開しています。その数あるコレクションの中には、江戸時代に創られた「堤人形」、「花巻人形」、「相良人形」、「三春の張り子人形」などもこけしと共に一堂に会しており、訪れた方々は、すばらしい古人形の世界に浸り、感動し、そして満たされた気持ちでいっぱいになるといいます。そして、東北の誇る伝統こけしが、こられの古人形の影響を多分に受けて誕生したことを実感できるそうです。

■このプロフィールは、
 カメイ美術館:高橋五郎コレクションより「東北の古人形の美 -こけし誕生の背景をたどる -」のページに掲載されている内容を一部編集させていただきました。


「出会い」と「天与の恵み」    高橋五郎

 私がこけしに関心を持つようになった当初の頃、天江富弥、三原良吉、菅野新一、西田峯吉と いったこけし研究の第一人者と出会い、知遇を得て多くのことを学びました。
 大先輩の方々から度々「こけしの研究は進んでいるようでも謎めいてわからないことが多い。 自分たちの調査したことも、今となっては誤っていることが沢山ある。五郎さんは若いのだから 自分の足でしっかり調査してみなさい。」と助言を頂戴しました。こけしの研究調査など思いも よらないことであったが、元来知りたがりの性分があり、つい足を踏み入れてしまいました。 調査を重ねるほど工人諸氏やこけし産地周辺の数多くの古老たちに出会い、貴重な話を聞くこと ができましたる中にはこけし界の通説と異なる話を耳にして驚きもしました。
 こうした調査の中で発見した一つが、「岩松直助文書」でした。この内容は正にこけし界のロ ゼッタ・ストーンのようなもので、謎とされた江戸末期のこけし誕生期に近い頃の諸々のことを 一気に解明することになったのです。先人の方々が求めども目にすることがなかった古文書の発 見は、これが真実かと頭が真っ白になり、声が出ないほどの感激でした。この文書の解明にも多 くの人に出会い、教えを受けました。
 そして近年、入手して話題となったのが、古い肘折こけしの出現です。これこそ先人の方々が、 長いこと労を費やしての探求にもかかわらず追及の及ばななかった肘折こけしの始祖、井上(柿崎) 藤五郎のこけしでした。「岩松直助文書」や井上藤五郎の発見などは私一人の力によるものでは なく、数多くの出会いによるご協力の賜、そして偶然の天与の恵みによるものと実感しています。 この二つの発見から、これまでこけしの歴史上、解明困難とされたこけしの発生期の実態に迫り、 こけしの研究が大きく発展していくことを願っております。
                                          平成22年9月